
2025.07.13
お茶のふるさとへ
舞鶴茶ったが生まれる、もうひとつの場所
舞鶴で生まれ育って50年以上。
けれど、今回訪れた茶畑は、私にとって“知らない舞鶴”でした。
最初にこの場所を訪れたのは数年前、収穫のときでした。
由良川沿いに広がる茶畑。川に沿って吹く、海とは違うやわらかな風。
いつも見慣れている舞鶴の港とはまったく違う、緑の風景がそこにありました。
今回は、抹茶スイーツに使わせていただいているお茶の産地「植和田園」の植和田ゆうきさんを再訪しました。
前回とは違って、収穫時期ではない静かな季節。それでも、感じるものは多くありました。
台風を乗り越えて、育つ茶畑
目の前の畑は静かで穏やかでしたが、ここは何度も台風の被害を受けてきた土地でもあります。
11年前の2014年に由良川が氾濫し、茶畑は水没。お茶どころか、家屋への浸水、すべての農作業が止まってしまうほどの大きな被害でした。
そんな過去を持つ土地に、またこうして若芽が広がっていることに、静かな感動を覚えます。
茶葉をさわる。赤ちゃんのような、新鮮さ。
新芽に指をのせた瞬間、「赤ちゃんみたい」と思いました。
柔らかくて、みずみずしくて、透き通るような若さ。
抹茶って、こんなに繊細な葉っぱを挽いてできているんだと、あらためて感じます。

人がつなぐ、お茶の未来
今回お邪魔した「植和田園」さんでは、80代のおばあちゃんが今も現役。
そのお茶づくりを引き継いだのは、なんと28歳の男性(孫)。
お二人ともとても気さくで、真剣で、静かに熱意を持っている方たちでした。
「人手が全然足りないんです」
「収穫したくても人がいないから、茶葉がそのまま育ちすぎることもあるんです」
茶葉が育っても、摘めない。
設備を整えればもう少し効率化できるけど、今は難しい。
支えているのは、70〜80代の方たちばかり。
それでも、静かに、でも確かに、畑は今日も緑を増やしていました。

“宇治茶”の中に、舞鶴のお茶がいる。
「宇治茶」といえば、日本一有名なお茶。
全国的なブランドで、その名を知らない人はいません。
実はその中には、舞鶴で育った茶葉も含まれていることがあります。
舞鶴のお茶は、クセが少なくてやさしい味わい。
だから、他の茶葉と混ぜても“味の主張”をしすぎない。
一方で、色の出方は非常に優れていて――
ブレンドしても、抹茶の美しい緑がしっかりと表現される。
それはつまり、調和しながらも、光る力を持った茶葉だということ。
控えめだけど、美しい。そんな舞鶴のお茶の個性に、静かな誇りを感じました。

茶葉の強さは、過酷さの中で育つ
「このまま雨が降らなかったら、枯れてしまうんですか?」
ふと、そんなことを聞いてみました。
すると返ってきたのは、少し意外な答え。
「水やりしてもね、意味がないんですよ。
ちょっとやそっとじゃ足りないし、甘やかすと根が伸びなくなる。」
お茶の木は、過酷な環境の中で、自分で根を伸ばすんだそうです。
特にここは川沿い。地面の奥には水分が残っている。
そこを目指して、茶の根は深く深く、生命力で水を“飲みに”行く。
人の手ではどうにもならないときこそ、
茶葉は強くなり、味も深くなるのかもしれません。
茶畑にある、静かな緊張感
夕暮れの茶畑はとても静かで、風の音しかしませんでした。
けれど、それが逆に、ちょっとした緊張を生みます。
「夏の夕方は、クマが出るんですよ」
と、軽く言われて、ドキッとしました。
美しくて静かなだけじゃない。
自然は、やさしさも、厳しさも、全部持っている。
だからこそ、この場所で育った茶葉には力があるんだ――
そんなことを、身体で感じた夕方でした。

色が、とにかくキレイ。発色が良くて、クセがないからブレンドされても味を邪魔しない。 実際、舞鶴で育ったお茶が京都市内で加工されて「宇治茶」として流通していることも多いそうです。
名前は“宇治茶”でも、育った場所は舞鶴。 だけど舞鶴の名前は、なかなか表に出てこない。
だから、「舞鶴茶った」っていう名前には、ちょっと意地も込めてます。 「舞鶴のお茶、ちゃんとおいしいんだよ」って伝えたいんです。
茶畑で風に吹かれながら、そんなことを思いました。
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